当事者同士の話し合いで離婚問題が解決できなかった場合、家庭裁判所の離婚調停で離婚に向けた話し合いを続けることになります。
ここでは調停で離婚する場合、すなわち調停離婚の特徴や進め方について解説します。
調停離婚とは
調停離婚は、家庭裁判所の家事調停と呼ばれる手続きを利用して離婚する方法です。
調停では、調停委員と呼ばれる中立的な立場の第三者が仲裁役となって話し合いが行われます。
仲裁役はいるものの、あくまでも当事者相互の話し合いで解決する、という形になっているのがポイントです。
なお、当事者同士の話し合いがこじれて「裁判するしかない!」となった場合も、まずは調停で話し合いを試みるのが法律上のルールです(調停前置主義)。
調停を行っても話し合いがまとまらなかった場合にはじめて離婚訴訟を提起できる、という建前になっています。
調停離婚の特徴
調停離婚の特徴やメリットは次の通りです。
相手と直接顔を合わせないで済む
調停は調停委員が当事者の話を30分ほどかけてヒアリングし、その内容をもう一方の当事者に伝える、という形を何度か繰り返す、という方法で行われます。
直接相手と顔を合わせないまま、話し合いを進めることも可能ですので、感情的にならずに済むというメリットがあります。
調停委員が話を聞いてくれる
調停は、調停委員会が主宰する形で行われます。
調停委員会は裁判官(調停官)と調停委員(男女2名)から構成されますが、実際には裁判官はほとんど調停には出席しません。
ほとんどの調停は、一般市民から任命された調停委員が中心となって行われます。
調停は男女2人のペアで、50~60代の人生経験豊富な人が選ばれることが多いようです。
弁護士がなることもありますが、実際には幅広い職業の人が選ばれています。
調停委員は当事者の話を聞き、話し合いの仲介役・まとめ役となります。
調停離婚を有利に進めるための方法
調停離婚を有利に進めるためには、調停委員を説得し、自分の味方になってもらうことが大切です。
そのためにも、調停の場では何をどのように話すか、そしてどのように振る舞うかが重要になります。
具体的に注意するべきポイントとしては、次のようなことがあげられます。
礼儀正しい振る舞いを心がける
調停委員も人間です。
調停の場での態度に問題があると調停委員からの印象が悪くなり、調停の行方にも悪影響を及ぼす可能性があります。
むやみやたらと相手の悪口を言わない、遅刻をしない、誠実に振る舞うなど礼儀正しい態度を心がけましょう。
ジェネレーションギャップを意識する
調停委員は比較的上の世代から選ばれることが多く、ジェンダーやモラハラなどに対する感覚が自分の世代と異なる可能性があります。
調停委員の世代ならではの感覚や価値観を理解し、自分の主張を伝えるときは自分の親を説得するようなつもりで臨むとよいかもしれません。
簡潔に要点を話す
調停の時間は限られています、自分の気持ちや過去にあったことをすべて伝えようとすると何が言いたいのかわからないまま時間切れになってしまいますので、自分の主張・言いたいことにポイントを絞って話しましょう。
また、「自分の意見は正当なものである」と調停委員を納得させるためにも、主張をするときは説得的な理由をセットにして話すようにしましょう。
感情的な振る舞いを避ける
調停の場は相手との交渉の場でもあります。
調停委員の話や相手の主張に対してムキになって反論するといった態度をとるのは避けるべきです。
相手方の言い分をいったん受け止め、議論がかみあうように考えを整理しましょう。
自分の意見をきちんと伝えることは大切ですが、交渉を有利に進めるためにもあくまで冷静に振る舞いましょう。
弁護士にサポートしてもらうという選択肢もある
離婚調停は当事者だけで手続きを進めることもできます。
ただ、法的な知識がない、一人で交渉するのは怖い、といった理由から、不安に思う方もいるかもしれません。
このような場合には、弁護士に代理人になってもらい、離婚調停をサポートしてもらうという選択肢が考えられます。
調停委員は人生経験は豊富ですが、法律の専門家とは限りません。
弁護士が入ることで、法的な観点から適切な主張を行い、調停委員に正当性をしっかり伝えられます。
また、調停期日前にあらかじめ法的なアドバイスをもらえる、争点が整理されてスムーズに調停が進む、といった点もメリットです。
離婚調停がまとまらなかった場合は?
離婚調停はあくまでも話し合いによる解決を目指すものです。
いつまでも話し合いが平行線をたどっていると、「これ以上話し合っても意味がない」ということで調停不成立となってしまいます。
こうなると、あとは裁判などによって解決するしかありません。
調停段階から弁護士がついていた場合、万が一裁判になったときでもスムーズに対応することができます。
逆に言うと、裁判での勝敗を見越して、調停段階で強気な提案をしたり、妥当なところで譲歩したりなど、早期解決に向けた助言も可能です。
離婚調停をするかもしれない、となった場合は、一度弁護士にアドバイスを求めてみるのもよいかもしれません。