認知・親子関係
離婚や男女関係をめぐるトラブルでは、当事者の「子ども」に関する問題が起きることがあります。
その1つが子どもの認知・親子関係に関するものです。
法律上の親子関係が発生する場合
法律上の「親子」となる人たちの間には、扶養義務や相続権をはじめとするさまざまな権利や義務が発生します。
そして、民法では法律上の親子関係が発生する場合として次のようなケースを想定しています。
なお、実子の場合、母子関係は分娩の事実によって母子関係が明確にわかるケースが多いため、主に父子関係の有無をめぐって問題が起こるケースが多いです。
婚姻中に妊娠・出産した子どもの場合
婚姻中に妊娠・出産した子どもについては、婚姻中の男女の間に生まれた子どもであると法律上、推定されます。
具体的には、結婚してから200日を過ぎた後、または離婚した日から300日以内に生まれた子どもについては、婚姻中に妊娠した子どもと推定され、夫(離婚した場合は前夫)の子どもと推定されることになります。
これを嫡出推定といいます。
なお、この場合生まれた子どもは夫婦の嫡出子となります。
ちなみに、「推定する」というのは、「法律上とりあえずそういうことにしておく」というくらいの意味であり、反対の事実があったことが証明された場合には推定が覆されます。
そもそも夫が海外に長期赴任しているのに懐胎したなど、明らかに夫の子どもではないといえる事情が認められる場合には、推定は働きません。
婚姻前に妊娠、婚姻中に出産した子どもの場合
婚姻前に妊娠、婚姻中に出産した子どもについては、「婚姻中に出産した」という事実が重視され、夫婦間の嫡出子として扱われます。
ただし、婚姻前に妊娠・出産した場合のように、生まれた子どもを夫の子どもとして推定する旨の規定はありません。
このことから、婚姻前に妊娠し、婚姻中に誕生した嫡出子のことを「推定されない嫡出子」と呼んでいます。
婚姻外で妊娠・生まれた子どもの場合
婚姻していない男女の間に生まれた子ども(非嫡出子)の場合、母子関係は分娩の事実によって明らかになっているものの、父子関係を明らかにしてくれるような手がかりは法律上何もない状態です。
したがって、このまま何もしないでいると生物学上は血がつながっていても、法律上は赤の他人として扱われることになります。
婚姻外で生まれた子どもについて父子関係を発生させるためには、認知という手続きが必要です。
父親が認知を行うことで、初めて法律上の父子関係が発生します。
なお、子どもの利益という観点から、一度行った認知を撤回することは許されていません。
血のつながらない子どもを養子にする場合
自分とは血のつながらない子どもであっても、養子縁組をすることで
法律上の親子関係を発生させることが可能です。
養子縁組には普通養子縁組、特別養子縁組の2種類があります。
生まれた子どもが「俺の子じゃない!」「夫の子ではないのでどうにかしたい」という場合に取り得る手段
婚姻中の夫婦に生まれた子ども、あるいは夫婦が別れてすぐに生まれた子どもについては、とりあえず夫の子どもとして扱われることになります。
しかし、夫婦の事情は人それぞれです。
実際には生まれた子どもが「夫の子どもではなかった」ということもないわけではありません。
このような場合、関係者が嫡出否認の訴えや親子関係不存在の訴えを起こすことで、父子関係を否定できることがあります。
嫡出否認の訴え
嫡出推定の働く子どもについて、法律上の父親は子どもの生まれたことを知ってから1年以内に嫡出否認の訴えを起こすことができます。
訴えが裁判所に認められた場合、父子関係が否定されます。
ただし、子どもの利益という観点から、子どもが生まれたことを知ってから1年を過ぎた場合については嫡出否認の訴えを起こすことはできません。
親子関係不存在の訴え
推定されない嫡出子について親子関係を否定したい場合、親子関係不存在の訴えを起こすことで親子関係を否定できます。
親子関係不存在の訴えについては、法律上の父親以外の人でも起こすことができます。
父親が認知してくれない場合に取り得る手段
婚姻外のカップルの間に子どもが生まれた場合、男性側が認知をいやがることがあります。
このような場合、子どもの母親や子ども本人は認知調停・認知の訴えといった手段によって、生物学上の父親に認知を求めることができます。
認知調停がまとまって父親が認知をすることに同意した場合、認知の訴えで裁判所が「認知をするべき」という判決をした場合には、認知の効力が発生します。
なお、この認知の訴えについては、父親が死亡した後でも行うことが可能です(死後認知)。
親子関係をめぐるトラブルの相談は弁護士に
認知や親子関係をめぐっては関係者の利害が対立し、トラブルに発展することがしばしばあります。
親子関係が認められれば父親の相続権が子どもに認められるため、子どもの利益に与える影響も大きいです。
当事者の話し合いで解決できない場合は裁判所での手続きが必要になります。
もし困ったこと、不安なことがありましたら、早めにご相談いただければと思います。