離婚後に子どもを引き取って育てる場合、子どもの生活費や教育費など毎月一定の出費がかかります。
日本の民法では、親の扶養義務の一環として、子どもの養育に必要な費用の一部を別れたパートナーに支払わせることを認めています。
養育費とは
経済的に独立できる年齢に達する前の子ども(未成熟子)がいる場合、親にはその子どもを扶養する義務があります。
こうした扶養義務にしたがい、親が支払う義務を負うお金が養育費です。
実際に子どもと暮らして面倒を見ている側の親に対し、そうでない方の親から支払われます。
養育費が支払われる期間
養育費を支払わなければならない場合は、未成熟子がいるケースです。
つまり、親としては経済的に自立できるまでは子の面倒を見なければならないということになります。
未成熟子イコール未成年ではない
未成熟子というと、未成年の子どもを思い浮かべる人も多いですが、それは誤解です。
何歳までが未成熟子にあたるかという点について、法律でルールが設けられているわけではないからです。
成年に達していても学生の場合は未成熟子にあたりますし、逆に未成年であっても働いて自活している場合は未成熟子にはあたりません。
最近では大学や専門学校などに進学する子どもが増えていることもあり、「子どもが最終的に学校を卒業するまでは養育費の支払いをしてほしい」と一方の親が考えるケースも増えてきました。
しかし、実際にいつまで払ってもらえるかについては、親の経済力や双方の親の学歴などの事情を考慮して決められることが少なくありません。
ただし、過去の裁判例では、子どもが学校(大学含む)に在学中の間は未成熟子と判断される例が多いようです。
また、学校を卒業した後であっても、障害や病気といった事情から自立が難しい子どもについては、経済的に独立が期待できないとして「未成熟子」にあたると判断した裁判例もあります。
実際に支払う期間は夫婦の話し合いで決まる
実際に養育費をいつまで支払うかは夫婦の話し合いで決まるところもあります。
しかし、進学費用などを一切出さないとなると、子どもの将来に大きく影響するのも事実です。
子どもの将来のためにも夫婦間の感情的対立とは一時離れて、親として子の対しなすべきことをしてあげられるか否か、みんなが納得できる判断をするべきといえるでしょう。
養育費の金額は?いくらもらえる?
養育費の金額は、親の収入などをもとに計算されます。
具体的には父母の収入、子どもが親と同居していた場合に必要となる生活費を考慮し、同居しない親がどのくらい養育費を負担するべきかを計算していくことになりますが、実務では算定表が使われることが多いです。
算定表の詳しい中身については、家庭裁判所のホームページで公開されているので、ご自身でも確認できます。
養育費の増額・減額は認められるか
算定表で計算される養育費の金額は、公立校で教育を受けた場合を前提としているため、子どもが私立への進学を希望した場合や習い事に通い始めた場合には、養育費の増額をめぐって問題が起きることがあります。
増額が認められるかどうかはケースバイケースですが、子どもが私立に通うことを両親ともに賛成している場合の私立の学費や、分不相応に高いとはいえない塾代などについては、一緒に住んでいない親にも負担する義務が認められることがあります。
一方、親が再婚した場合は養育費の減額が問題になります。
権利者(養育費をもらう側)が再婚したというだけでは減額が認められにくいですが、子どもと再婚相手が養子縁組をした場合には、それ以後慰謝料の支払いが免除されることがあります。
義務を負っている側が再婚し、新しく子どもが生まれた場合には扶養するべき家族が増えたということで減額が認められる可能性があります。
養育費をきちんと支払ってもらうためのポイント
子どもがいるカップルの離婚において、養育費をどうするかは大きな争点のひとつです。
話し合いで決める夫婦も多いかもしれませんが、口頭で取り決めをすると「言った」「言わない」をめぐってあとでトラブルの原因になりやすい傾向があります。
万が一支払われなかったときのことも考えると、公正証書や調停調書の形にしておくのが安全といえるでしょう。
これらの文書の形に合意内容を記しておくことで、万が一養育費が支払われなくなった場合に相手の財産に対して強制執行をかけられるようになります。
実際問題、養育費の支払いがストップしてしまうケースは珍しくありません。
子どもの将来にもかかわるお金なので、できるだけ確実に支払ってもらえるように手を打っておきましょう。
養育費に関する悩みは弁護士に相談を
養育費の金額や支払い方法については必ずしもスムーズに合意できるケースばかりとは限りません。
なぜなら養育費をめぐる話し合いをしている時の夫婦は、離婚をめぐり対立しているので、冷静な判断ができなくなっていることが多いからです。
早く離婚したいからといって、養育費について大幅な妥協をすることはよくありません。
また、離婚後に養育費がきちんと支払われるかどうかは子どもの生活や進学にも大きく影響します。
あとで後悔しないためにも、適正な金額を確実に支払ってもらえるように相手とねばり強く交渉することが大切です。
一方、支払う側についても、払う金額によっては後の生活に影響が出る可能性があり、相手の言うとおりに払うのは難しいというケースもあるかと思います。
いずれにせよ夫婦で納得のいく結論を出すことが大切ですので、もし話し合いがスムーズにいかない場合は一度弁護士にご相談いただければと思います。